こちら私の遺言書。

愛すべきオタクたちへここに遺言を残す。

舞台「文豪とアルケミスト」〜余計者の挽歌(エレジー)〜

久方ぶりです。ブログを書くのが久々すぎて文字の打ち方を忘れましたえりなです。

 

今回は2/21から絶賛上演中の舞台「文豪とアルケミスト〜余計者のエレジー〜」が予想外の舞台だったため、己の備忘録として書き留めておきます。ちなみに私は原作も軽くプレイしたくらいで、歴史上の文豪についても一般教養レベルにとどまるためそのへんについてはあたりまえ体操なことしか書けないのでご了承ください。そしてネタバレを含むのでこれから観劇する人はみないでね。

 

話のおおまかな流れとしては、何者かに脅かされ消えていく書物を守るためアルケミスト(刀の審神者みたいなもん)に召喚され現世に転生した文豪達が「潜書」をして本の中にはいり敵と戦い文学を取り戻す。という話です。とてもシンプル。文豪をイケメンにしてみた!じゃなくて生前の記憶をもった文豪(所々記憶が抜けてはいる)が現世に転生されてきた。という設定がナイスですね。でもみんなめちゃめちゃすんなり武器を手にとって戦ってるのはなんなんだろう。生前そんな機会なかったよな?文豪とは?

 

さて、そんな文アル、今回は5つのおススメポイントを挙げて書き記していきたいと思います。

 

 

01 太宰治から芥川龍之介への一途な愛

 

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主人公はサブタイトルにあるように余計者(この場合多分没落貴族の意)=太宰治(演:平野良さん)です。

この太宰治、たしかに原作でも明るめで情緒がやべーキャラではあるんですが、平野さんの解釈…というか作品を成り立たせる上で必要になった太宰のキャラがやばい。ありえん死ぬほど情緒ない。突然謎の動きをするな。突然マイメロだょ〜みたいな声で喋るな。

史実でも芥川龍之介を敬愛してたことは有名ですが、なんか本人を目の当たりにした時の反応がやばい。推し俳優と遭遇した若手俳優初心者みたいになってるもん。

でも思ったんですけど、劇中でも言われてるように芥川と太宰って同じ時代に活躍した人ではないから、太宰にとって芥川本人と出会えたことって我々が二次元の推しキャラと本当に会えたみたいな状態なワケなんですよね。そりゃあんな語彙力を失ったチンパンジーみたいな状態にもなるわなぁ。私ももし現実世界で仁王雅治と出会ったらチンパンジーになると思うし。

 

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そしてその太宰に敬愛されてる芥川龍之介(演:推し)は少し天然だけれども戦闘時は穏やかな笑みを崩さないままバッサバッサ敵を倒していくのが少し狂気的なキャラ。足払いと凛とゆれるピアスが美しい。あと踏み技がすごい。秀敏くんの殺陣はこれまでの作品でそれなりに観たことがあるんですけど、これまでは主に筋肉の躍動を感じる!というような殺陣ばかりだったんですが今回はこれまでになくなんとも雅な殺陣ですね。動きが少なく見える分逆に疲れそう……。

原作では他人に興味なさそうなキャラだなーと思ってたんですけど、今回の話だと己が生前親友を苦しめた罪の意識に苛まされる優しい人ですね。もしかしたら原作にも舞台と同じようなイベストとかあるのかもしれんけどわからんです。

にしても友達一人失ったくらいで落ち込みすぎじゃね!?とは思ったんですが。考えてみるとそもそも今回の主軸となる芥川の「鼻」という作品は人間の人間に対しての優越感をテーマにしてるものだと思うので、その作品が生み出された背景に「親友と共に仰いでいた師から、己だけが賞賛を受けた手紙を友にみせて友を傷つけた」ということがあったのは確かに皮肉というか。

芥川のどこか飄々としたキャラクター性も多分史実の作品にみられる人間の業の深さを俯瞰してるかのようなところから来てると思うので、己もまたその罪深き人間のうちの一人だということを改めて認識してしまって落ち込んだといったところなんでしょうか。実際文アルの原作ゲームには芥川と島崎藤村(舞台にはいない)との会話ストーリーで芥川が「傍観者である人間の優越感に対する嫌悪」を臆さず島崎に向けてる場面があるので、己がその嫌悪の対象であるはずの人間であることへの自己嫌悪はなかなかのものだったのではないでしょうか。まあ、脚本家がそこまで考えて書いてたかは知らん。

 

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舞台の最後、罪の意識で己を見失ってしまった芥川は心の隙間に敵の侵入を許し、敵と化し太宰達に襲いかかります。しかし太宰は敬愛する芥川に手を出すことができない。憧れの人に刃を向けられてたじろぎ、それでも芥川への敬愛はやむことなく芥川の心に訴えかける。しかし芥川に「君は僕の何を知ってるんだい?」「僕には才能がないんだ。」「みんな僕を誤解している。」と一蹴される太宰。それでも太宰は己の敬愛する芥川と芥川の作品を信じ続け、傷を受け(物理的に)落ちていく芥川を追って闇にに飛び込む。

 

 

ーーーーー!?

ここで気がついてしまったのですが、あれ、この舞台、芥川先生がヒロインじゃない!?

いや、ヒロインじゃないですか!?闇落ちヒロイン。それに気がついた次の日演出家の方が

 

 

とツイートしてらっしゃって、ほーら!?やっぱり芥川さんヒロインやん!!となった。

傷を負い「原稿の墓場」に落ちた芥川を追って一緒に落ちた太宰は、怪我した芥川を背負いさながらカンダタのように「蜘蛛の糸」を伝って登ります。しかし蜘蛛の糸は途中で二人分の重みに耐えきれず切れかかってしまう。芥川は「僕を切り離してくれ」と頼みますが、太宰は決してその手を離さずこう言います。

「嫌です!オレ、今でもはっきりと覚えてるんです。芥川先生の訃報をきいたあの日のこと。体が震えて、頭の中で真っ白になって。もしその時オレが同じ日同じ場所いれたら、絶対に死なせやしなかったのにって。もし唯一先生に罪があるとすれば、作品だけ残してさっさと逝っちまったことですよ。オレは、芥川先生に、芥川先生の作品に生かされてきたんです。だから今度は絶対に死なせたりしないんだ。オレと一緒に生きてください!!

 

長ゼリなのでセリフの詳細が定かでなく申し訳ないのですが、これはもはやプロポーズでしょ。一緒に生きてくれ、はプロポーズだよ。そして芥川の返答は「ありがとう…僕は僕の作品に自信がないけど、才能ある君がそういうなら生きられる気がするよ」とある意味太宰の想いは成就するわけです。そもそも太宰の作品自体が芥川の影響を受けてるんだから、太宰を肯定することが己への肯定にもつながる。なんだこのカップル。すごいな。おめでとう!ヒュウ!

 

02 武者小路実篤志賀直哉が醸し出すアレさ

 

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白樺派

芥川と太宰がストーリーのメインカップルだとしたらこちらは少女漫画の主人公の友達カップル。

とある公演日、みんな大好きついにカノバレしたけどあまり燃えなかったでお馴染み…ぎえさんがカテコで「ムシャはヒロインみたいって言われる💓」って言ってて、?となりましたが。君じゃない。メインヒロインはうちの芥川先生だ。

まあでも武者小路実篤志賀直哉はどちらかというとバカップル枠ですよね。マシュマロでいただいたのですが、この二人リアルに小学校だか中学校だかの同級生(史実の志賀先生は学業にあまり真面目でなく二回落第してるらしい)で生涯にわたって親しい友であったみたいです。

 

 

このふたり、ゲーム原作でも戦闘ボイスで「また志賀に笑われちゃうな…」(ムシャが弱ってる時)「俺が一番だってよォ!ムシャ!」(志賀のMVP獲得時)など、頻繁に互いの名前を呼びあい二人だけの世界を形成してるんですよね。

 

すごいどうでもいいけど文アルの武者小路実篤ってケツの穴にコンクリつまってるタイプの攻めじゃない?文アルの同人に知見がないので知りませんが。すごいどうでもよくてすみません。以上です。

ちなみに志賀さんは芥川先生の憧れの人でもあるようです。太宰→芥川→志賀 なのに太宰は志賀は嫌いという。なんなんだ。

 

03 みんなのおかん・オダサク

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明るい関西弁キャラ織田作之助

度々ツイートしてるんですけど、まじでありえんいいヤツなんですよ。

 

 

 

 

いい人すぎて心配になるんですよね。女の子だったらヒモ男と付き合ってDV被害とかにあってた気がするのでオダサクが男の子でよかったです。

 

 

04  アンサンブルスターズ

これ言葉で言い表すのが難しいのですが、この舞台のアンサンブル(というかこの演出家さんがよく使う演出の手法をこなす高いパフォーマンス力をもつアンサンブル)さん達、只者のアンサンブルではない。これが本当のあんさんぶるすたーずってか。

ある時はケツを叩かれ、ある時は侵蝕者役。またある時は布団。このように様々な役をこなします。給料三倍くらいもらった方がいいよ多分。

こればかりは、実際にみてくださいとしか言いようがない。

 

05  謎の中毒性

じつは私、初日観た時はふーんって感じでこんなにこの舞台にハマってなかったのに二日目の観劇から異様にハマってしまいました。

理由はよくわからないんですが、多分謎の満足感があるんですよね。

この舞台、会話劇のようにセリフ数がすさまじいのでその時セリフを言ってる人に目が向きがちなのですが背景として他の役者がやってる動きがとてつもなく細かい。例えばバーの場面ではほぼライトのあたってない背景ではるおと芥川が毎日ちょっとずつ違う身振り手振りで話していたりする。そんな演出が多く、毎日みても新しい発見があるんですよね。

あと役者の演技が日々深くなっていく。昨今の2.5舞台は素人を集めて初日ボロクソ、千秋楽ではセリフが聞き取れるようになったし棒読みじゃなくなった!みんな成長したねぇ!みたいなことは少なくなりましたが、あれはマジで「2.5次元という難しい文化を大衆に広めた過去という免罪符」をもつテニミュにしか許されないと思ってるので、そういう意味で役者の演技の成長を見守るというのは少し如何なものなのかと常日頃思っておりまして。

本当に毎日演技が進化していくというのは、この舞台のように初日から高い完成度な上で日々違う解釈をみせてくれたり、より深い感情がみえるようになったりすることで、だからこそ我々オタクは毎日劇場に同じ作品を観に足繁く通うわけです。なんかそこを間違って欲しくない本当に。

それと、なによりもこの作品公演時間も2時間ない程度で観劇後の疲れもあまりなく、とっても観やすい作品になってるんですよね。

セリフの掛け合いもテンポが絶妙で、例えばラストの蜘蛛の糸を二人が登ってくるシーンではシリアスなシーンなのにも関わらずそれを見つけたキャラの掛け合いが「あそこ!何かみえるぞ!」「糸を登ってきてる!?」の次に「お前ら目ェよくない?」というクスッとするセリフを挟んでくれてることによってシリアスになりすぎず気楽にみれる。

あとは個人的に侵蝕者に操られた芥川と太宰の戦闘シーンの太宰の「おれはただずっと先生のファンでいたいんです!ファンブックとか作りたいんです!!」が好き。ファンブックっておまえ。

 

そして何よりストーリーテラーである江戸川乱歩(演:和合さん)

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がほんとに……笑。

 

 

え、とてもかわいい(?)

すごい良い味だしてらっしゃいました。

 

 

 

 

とまあ、以上5点書き連ねましたが一つ言えるのはこの舞台一度みただけだと「ママチャリがすごかったな」というインパクトが凄すぎて他を忘れるので、物事を深く考えたい人は二度三度と観ると色々みえてくると思います。まぁチケットは既にないんですけど……。深く考えたくない人はママチャリのことだけ考えてていいと思います。コメディだからそれで正解なんだろうし。

 

そんな感じです。

 

再演が続編を切実に頼みます!!

 

オワオワリ。